2015年9月27日日曜日

コロンビア出張編(5)


月曜日のエルカルメンデチュクリでの研修の翌日、山ちゃんやカウンターパートのレイディさんはそのまま金曜日まで研修を続けていたのですが、奥平さんとぼくは一足先にブカラマンガへ。朝8時に再び5時間の道のりを戻っていきました。

この日はブカラマンガで、ヘンリーという脊椎損傷の障害者団体の代表と話しをする予定で、約束の2時に一時間ほど前に着いたので食事をして、写真のファン・バルデスのカフェテリアで待っていました。写真は右からマリアデルピラールさん、この日の会談相手ヘンリー、彼の協力者で理学療法士のオルガさん、通訳のルイス・ミゲル、マリアデルピラールさんの大学の仲間で、バリアフリーを研究しているという男性(名前忘れちゃいました)です。

このプロジェクトはメデジンに近いグラナダと、ブカラマンガと同じサンタンデール県にあるエルカルメンデチュクリと2つのサイトを対象に紛争被害者である障害者を支援していくものであります。現在そのそれぞれのサイトで細かく障害者を探してリストにしていることはすでにお伝えしました。プロジェクトでは、このサイトで当事者団体を作って、ピアサポート的な手法でエンパワメントしていき、最終的にここの障害者の自己肯定感が高まるという風に計画されています。しかしながら、現在半年経ったプロジェクト関係者の感触として、想像以上に障害者の数が少ない、とくに紛争で身体に障害を負った人たちは、メデジンやブカラマンガの大きな病院で治療を受け、そのまま帰ってこないことが多いので、さらに数が少なくなっている、などという問題が出てきており、このサイト内で団体設立はむつかしいと考えられ始めています。


向こう側ブカラマンガ〜エルカルメンを往復してくれたダニエル。
奥平さんたちは、そこでサイトに近く県庁所在地でもあるメデジン、ブカラマンガに団体を作って支援をし、そこの障害者をとおして、2つのサイトの障害者をケアしていこうという方針に転換していくことを考えています。この出張編(3)で会ったヘルマンや今回のヘンリーは奥平さんがこれまで会った障害者の中でもリーダー候補として有望な人で、そこからまた彼らの知っている障害者に声をかけてもらい、まずリーダー養成研修を行い、その後はさらに広く障害者を募ってもっと大きな規模のセミナーを開こうという計画になっています。

今回コロンビアに来て何となくこの国の障害者運動の大まかな構図というのが見えてきました。大統領府にはファン・パブロ・サラサールという頸椎損傷の当事者が障害者インクルージョンの担当としているのを初めとして、ボゴタにはアイデーのグループがあり、メデジンのヘルマン、ブカラマンガにはヘンリーがいます。ちなににメインストリームで研修したオマールもブカラマンガ出身で現在ここにいるということです。今回は会えなかったですが。カリにはアンドレス・イギータとモントーヤもいて、全国的にそこそこ障害者運動をやっているリーダーたちがいるということ、彼らが、国連の障害者権利条約を国に遵守させるよう要求するネットワークを作っていることなども分かってきました。コロンビアではすでに権利条約を国内法に適応しないといけないということを記した1618号法というのも存在して、彼らはこれをもとに交渉を行っています。

ただ奥平さんの目から見て、そのリーダーたちがみんなばらばらで活動しているのが問題で、そうした状況をよくないと思いながらもこちらのリーダーたちも認めてしまっています。これからの流れですが、先に書いたような研修をつづけて、できるだけ奥平さんのできることをやってもらってその後2月に廉田+メインストリーム協会メンバーが、本格的に自立生活運動の考え方を障害者と政府関係者に伝える。来年度さらにこれを全国的に拡げていき、できればKaloieのときのように日本での地域研修にまで繋げていきたいと思っているのですが、ここまではまだはっきりしたことは言えません。


法律を書いた研修用の冊子を奥平さんに献本中

ヘンリーの話では、一般の障害者に対する施策がほぼゼロに近いので、みんなむしろ紛争被害者になりたがっており、その方が優先的に住居をもらえたり、補償金がもらえたりするので、嘘をついてなる人もいるそうです。紛争被害障害者の一般社会への復帰をめざすこのプロジェクトですが、むしろ紛争被害障害者になる人の方が多いという倒錯した状況もあって、かなり複雑なことになっているのですが、方向性としては安心して普通の障害者として暮らせるように国全体の障害者施策の向上を狙っていくというごく当たり前の戦略を取らざるを得ないのが、ぼくもそうですがプロジェクトが今考えていることのようです。

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